不動産売却をはじめて考えている人にとっては、どのような書類が必要になるのかわからないことも多いと思います。不動産売却と一口に言っても、「不動産売却の査定をする際に必要な書類」と「売買契約の際に必要な書類」そして「確定申告に必要な書類」と3つの段階に合わせた必要書類を用意する必要があります。そこで今回は不動産売却に関する3つの段階に応じた必要書類やその手続きについて理解を深めていきましょう。
1、不動産売却の査定に必要な書類
まずは、不動産の売却を不動産会社に依頼する際に必要となる書類から見ていきましょう。以下の表は不動産売却する物件種別ごとに必要となる種類一覧です。「〇」は必ず必要なもの。「△」はあった方がよいもの、になります。
必要書類 | 一戸建て | マンション | 土地 |
---|---|---|---|
登記済権利書 | 〇 | 〇 | 〇 |
売買契約書 | △ | △ | △ |
重要事項説明書 | △ | △ | △ |
土地測量図、境界確認書 | ― | △ | △ |
図面・設備の仕様書 | △ | △ | ― |
固定資産税・納税書 | 〇 | 〇 | 〇 |
マンション管理規約 | ― | △ | ― |
では、各必要書類の内容・紛失時の手続きについて説明していきます。
「登記済権利書」の紛失時の手続き
「登記済権利書」とは、法務局から公布される書類で、売却する不動産の登記名義人がその不動産の所有者であること証明する権利証のことです。別名「登記済証」とも言います。売却する物件が平成17年以降に取得したものである場合は、「登記済権利書」の代わりに「登記識別情報」が発行されるケースもあります。
「売買契約書」の紛失時の手続き
「売買契約書」とは、売却予定である不動産を購入した際に締結した契約書のことです。売却する不動産の状況や何か特約等の条件が付いていないかなどを確認するために必要なものです。仮にも紛失した場合は、購入した際に依頼した不動産会社に問い合わせましょう。「売買契約書」は、購入者用と不動産会社用で保管するため、必ず2部用意していますので、不動産会社が必ず保有しています。
「重要事項説明書」の紛失時の手続き
「重要事項説明書」とは、売却予定の不動産を購入した際に発行された説明書のことです。「重要事項説明書」も不動産に関しての特記事項や注意事項が無いかなどを確認するために必要になります。仮にも紛失した場合は、不動産会社が保管している場合もありますので一度、不動産を購入した際の不動産会社に問い合わせてみて下さい。ただし、「売買契約書」のように不動産会社が保管する義務がないため、不動産会社も保管していない可能性はあります。
「土地測量図・境界確認書」の紛失時の手続き
「土地測量図・境界確認書」とは一戸建てや土地を売却する際に、土地の面積や隣の家と境界線を明確にするための必要書類です。仮にも紛失した場合は、法務局に保管がされていますので、管轄の法務局に訪問し、コピーを取得するようにしましょう。お住まいの管轄法務局は「法務局公式HP 管轄のご案内」よりお確かめください。
「図面・設備の仕様書」の紛失時の手続き
「図面や設備に関する仕様書」とは、一戸建てやマンションを購入した際に配布される仕様書のことです。間取りや実装された設備などの情報が記載されているものになります。「図面や設備に関する仕様書」を仮にも紛失した際には、一戸建ての場合は購入した工務店や不動産会社に、マンションの場合は購入した不動産会社や不動産管理会社に問い合わせてみましょう。
「固定資産税・納税通知書」の紛失時の手続き
「固定資産税・納税通知書」とは、固定資産税の納税額を知るのに必要な書類です。また不動産売却時に行う移転登記などに必要な「登録免許税」を算出するのにも使用します。毎年、支払いを行っているはずですので最新のものを用意するようにしましょう。「固定資産税・納税通知書」を仮にも紛失した場合は、管轄の市区町村の役所に電話をして郵送にて再発行してもらいましょう。
「マンション管理規約」の紛失時の手続き
「マンション管理規約」とは、マンションがどのように維持管理をされていて、例えばペットなどを飼ってよいのかなどのルールが記載された規約書になります。「マンション管理規約」は買主にとって知りたい情報になりますので準備をしておくことをおすすめします。仮にも紛失した場合は、マンションの管理会社に問い合わせをして再発行してもらいましょう。
以上が不動産売却の査定を依頼する際に必要な書類になります。続いて「売買契約の際に必要な書類」について説明していきます。
2、売買契約の際に必要な書類
続いて「売買契約の際に必要な書類」について説明していきます。「〇」は必ず必要なもの。「△」はあった方がよいもの、になります。
必要書類 | 一戸建て | マンション | 土地 |
---|---|---|---|
身分証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
実印 | 〇 | 〇 | 〇 |
印鑑証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
住民票 | 〇 | 〇 | 〇 |
銀行口座の通帳 | 〇 | 〇 | 〇 |
ローン残高証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
登記済権利書 | 〇 | 〇 | 〇 |
建築確認書 | △ | ― | ― |
検査済書 | △ | ― | ― |
建築設計図書 | △ | ― | ― |
設備に関する説明書 | △ | △ | ― |
では、各必要書類の内容と紛失時の手続きについて説明していきます。
「身分証明書」の紛失時の手続き
「身分証明書」は様々な生活シーンでよく聞くと思いますが、売主本人であることの確認書のことです。仮にも売却予定の不動産が共有物の場合は、全員分の「身分証明書」が必要になります。「身分証明書」として有効なものは、「運転免許証」「ポスポート」「保険証」がありますが、一般的には「運転免許証」が使われることが多いですね。
「実印」の紛失時の手続き
「実印」とは、市区町村の役所にて印鑑登録した印鑑のことです。もしも「印鑑登録」をしていない場合は、市区町村の役所にて印鑑登録をする必要があります。ちなみに、印鑑登録ができる印鑑は規定が設けられており、「8mm角の正方形~25mm角の正方形」の間に収まる印鑑でなければなりません。なので、現在印鑑登録ができる印鑑がない場合は、インターネットでも簡単に注文ができ、即日完成が可能なので印鑑登録ができる印鑑をつくっておきましょう。
「印鑑証明書」の手続き
「印鑑証明書」とは、正式に登録された印鑑の証明をする書類のことです。「印鑑証明書」は、発行から3ヵ月以内のものしか有効にならないため注意しておきましょう。「印鑑証明書」の発行は市区町村の役所で行えますが、その際に「印鑑登録カード」もしくは「印鑑登録証」が必要になります。
「住民票」の手続き
「住民票」は登録した住所と現住所が異なる場合に必要になります。「住民票」の発行は市区町村の役場で行うことができ、「印鑑証明書」と同様に、発行から3ヵ月以内のものだけが有効な「住民票」になりますのでご注意下さいね。
「銀行口座の通帳」の手続き
「銀行口座の通帳」は、不動産売却などの代金を振り込んでもらうために必要なものです。振り込んでもらう口座になりますので、どの口座にするのかはよく考えてから用意するようにしましょう。
「ローン残高証明書」の手続き
「ローン残高証明書」とは、住宅ローンなどの借り入れを行っている人は必要な証明書です。一般的な金融機関の場合、毎年10月~11月ごろに発行されますので、必ず「ローン残高証明書」をもらうようにしましょう。仮にも、ローン残高証明書がない場合は、「返済予定表」でも問題ありません。
「登記済権利書(権利証)」の手続き
売却予定の不動産の所有者を証明する書類です。不動産を購入した際に法務局より発行されているはずの書類になります。仮にも紛失した場合は以下の関連ページに詳しく手続きの流れを説明しておりますので手続きを行って下さい。
「建築確認済書」の手続き
「建築確認済書」とは、建物を作る際に基準にしっかり適合しているのかを審査し、通過した証明書のことです。市区町村の役場にて発行される証明書ですが、一般的には一戸建て購入時に工務店やハウスメーカーが手続きを行ってくれているはずです。「建築確認書」を仮にも紛失した場合は、市区町村の役場に問い合わせることにより再発行できる可能性がありますので一度問い合わせてみましょう。
「検査済証」の手続き
「検査済証」とは、建築物の工事が完了した時点で国が認可している検査機関に届け出をして検査しましたという証明書です。基本的には、一戸建て購入時に工務店やハウスメーカーが手続きを行ってくれており、市区町村の役場より発行される証明書です。万が一、紛失した場合は、市区町村の役場に問い合わせてみてましょう。
「建築設計図書」の手続き
「建築設計図書」とは、建物の設計図面のことです。基本的には一戸建てなどの購入の際に工務店やハウスメーカーより受け取る書類です。万が一、紛失した場合は、工務店やハウスメーカーが保管している可能性があるため一度問い合わせてみましょう。
「設備に関する説明書」の手続き
「設備に関する説明書」とは、キッチンやトイレ、バスなど住宅の設備に関する説明書のことです。万が一、紛失した場合は、購入時の工務店やハウスメーカーに問い合わせたり、各メーカーのホームページに同じ型番の商品の記載がないかなど確認をしましょう。
以上が不動産の「売買契約の際に必要な書類」と各手続きになります。そして最後に「確定申告の際に必要な書類」を説明していきます。
3、確定申告に必要な書類
個人の人が不動産売却によって譲渡損失や売却益が出た場合、売却した年度末に確定申告が必要になる場合があります。しかし、確定申告の仕組みや必要な書類、あるいは手続きがわからないという方も多いと思いますので「確定申告に必要な書類」や手続きについて説明していきます。
確定申告が必要な場合とは
不動産を売却したすべての人が税法上、確定申告をしなくてはいけないわけではありません。では、どういった場合に確定申告が必要になるのでしょうか説明していきます。
売却益が出た場合は必須
不動産売却によって利益が出た場合は、確定申告を必ず行う必要があります。売却で得た収入から譲渡費用・取得費を差し引いた金額がプラスになっている場合であり、そのプラスになった金額に対して「譲渡所得税」がかかることになります。
売却によって損失がある場合は不要
一方、不動産売却によって損失が出た場合は、確定申告を行う必要はありません。確定申告は、給与所得以外に収入があった場合にするものであり、損をした場合は税法上、その義務はなくなります。しかし、例え損失した場合でも確定申告を行うことによって、給与所得などに対する税金の納税額を安く抑えることが可能になります。このことを「損益通算」と呼び、不動産売却に限らず、株式やFXなどにも適用されますので知っておくと得をします。
確定申告に必要な書類
必要書類 | 入手先 | 金額 |
---|---|---|
確定申告用紙(申告書B様式) | 税務署 | 無料 |
分離課税用の確定申告書 | 税務署 | 無料 |
譲渡所得の内訳書 | 税務署 | 無料 |
売買契約書(コピー) | 今あるもの | 無料 |
仲介手数料の領収書(コピー) | 今あるもの | 無料 |
また、買い替えなどの理由で、今住んでいるマイホームを売却した場合は3,000万円までの特別控除(税金優遇)を受けることができます。その場合は、上記の書類に加えて以下の書類も用意する必要があります。
必要書類 | 入手先 | 金額 |
---|---|---|
課税所得計算証明書 | 税理士 | 20~50万円 |
住民票 | 市町村窓口 | 300円 |
登記事項証明書 | 法務局 | 1通600円 |
住宅借入金の残高証明書 | 金融機関 | 基本無料 |
いかがでしょうか。不動産売却の際の確定申告で必要な書類のイメージはできましたでしょうか?上記以外にも状況によって必要な書類はケースによって異なる場合もありますので、そんなときは不動産会社や税務署などに相談してみるのも一つです。最後に不動産売却をスムーズに進めるコツを説明していきますね。
4、不動産売却の必要書類に関する注意点
ここまで不動産売却に必要な書類や手続きについて説明していきましたが、基本的に自らで作成して用意しなかればいけない書類は限られています。むしろ、各専門家に依頼することで全て作成をしてくれます。たとえば、売買や引き渡しで必要な「売買契約書」や「重要事項説明書」などは不動産会社が作成してくれます。また、確定申告で必要となる「課税所得計算書」は税理士の方が作成してくれます。
依頼先 | 作成書類 |
---|---|
不動産会社 | 売買契約書、重要事項説明書、各種清算金会計算書、領収書など |
司法書士 | 所有権移転登記、抵当権抹消登記など |
土地家屋調査士 | 境界確認書など |
税理士 | 課税所得計算証明書など |
このように各専門家に依頼ながら進めるのも一つでありスムーズに不動産売却を進めることができます。また、優良な不動産会社では、そういった各専門家を紹介して売主に面倒なストレスをかけないように手伝ってくれます。なので不動産売却をスムーズに進めるためにはまず親切で信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。不動産会社選びで不動産売却はスムーズに進むといっても過言ではありません。
5、不動産売却をスムーズに進めるコツ
不動産売却をスムーズに進めるコツはなんといっても信頼できる不動産会社を見つけることです。地元の小さな不動産会社もあれば大手の不動産会社の強み・弱みがあります。大事なことは、その不動産会社があなたの大切な不動産を親身になってサポートしてくれるかどうかです。そのために、1社1社不動産会社をまわってもどの不動産会社も基本的は言いことしかいいません。そんな時に一度、試してみると良いのが一度に複数の不動産会社に無料の査定依頼ができるサービスの活用です。実際に試すとわかりますが、不動産会社の対応やサポートは全く異なりますのでその中から親身になってくれる不動産会社をみつけてみましょう。