不動産の売却によって仮にも売却益が出た場合は、「譲渡所得税」という税金を納める必要が出てきます。そこでここでは「譲渡所得税」納税額を少しでも安く抑える方法を説明していきます。
目次
1、「譲渡所得税」とは何か
まず、はじめて聞くという人のために「譲渡所得税」とは何なのか説明していきます。この「譲渡所得税」というのは、不動産の売却により生じた所得(利益)に対してかかる税金のことです。「譲渡所得税」は、以下の計算式で算出され納める税金額が決まります。
譲渡所得税=課税譲渡所得×譲渡所得税の税率
なお、「課税譲渡所得」は以下の計算式で算出することができます。
「課税譲渡所得」=売却価格-(購入価格+購入時にかかった諸経費+売却時にかかった諸経費)
上記のような計算式のもと、「譲渡所得税」の納税額が決められます。「譲渡所得税」がどういうものかある程度、理解できたところで続いてその「譲渡所得税」を安く抑える方法を説明していきます。
2、「譲渡所得税」を安く抑える特定について
「譲渡所得税」を安く抑えるためには、以下の大きく3つの特例を利用する方法があります。
(1)3,000万円の特別控除の特例
(2)所得期間が10年以上の場合の軽減税率の特定
(3)買換えの特定
それでは、1つ1つ具体的に説明していきます。
(1)3,000万円の特別控除とは
居住用の不動産を譲渡(売却)した際に、出た譲渡所得(売却益)の金額から、最高3,000万円まで控除できる特例のことです。この特例は、所有期間の長短に関係なく適用できます。また、前年・前々年にこの特例及び、「特定居住用財産の買い換えの特例」「居住用財産の買い換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」の適用を受けていないことが条件です。売却益が3,000万円以内の場合は税金はかかりません。売却益が3,000万円超の場合、3,000万円超の部分が税金の対象となります。
3,000万円の特別控除を受ける条件
・売った年の前年及び前々年にこの特例、またはマイホームの買い換え特例等の適用を受けていないこと。
・親子や夫婦などの特別の関係がある人に対して売ったものではないこと。
・居住期間の長短に制限はありません。
・住宅ローン控除との併用はできません。譲渡所得が少額であれば、3,000万円控除をつかない選択もあり得ます。
(2)分離課税の特例(所有期間10年超の場合)
所有期間が10年を超えているマイホームを土地・建物ともに売却する場合、分離課税の特例があり、以下の軽減税率が適用されます。
・この特例は先ほどの3,000万円特別控除と合わせて利用できます。
・前年、前々年にこの特例を受けていないことが条件です。
譲渡益6,000万円以下の部分、軽減税率14%(所得税10%、住民税4%)
譲渡益6,000万円超の部分、軽減税率20%(所得税15%、住民税5%)
各年分の基準所得税額の2.1%を所得税とあわせて申告・納付することになります。
(平成25年から平成49年まで)
(3)特定居住用財産の買い換えの特例
平成29年12年31日までマイホームを売却して、マイホームを買い換えたときに、一定の要件を満たすものに限り、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です。特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税に行われず、買い替えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。
以下の適用要件があります。
・居住期間が通算10年以上であること
・前年、前々年に①②の適用を受けていないこと
特例の併用について
上記の特例については、併用できるものと併用できないものがあります。また、住宅ローン控除との併用はできませんので、譲渡所得が少額であれば使わない選択もあり得ます。
特例 | 併用できるもの | 併用できないもの |
---|---|---|
3,000万円特別控除 | 分離課税の特例 | 買い換え特例、住宅ローン控除 |
分離課税の特例 | 3,000万円特別控除 | 買い換え特例、住宅ローン控除 |
買い換えの特例 | ー | 3,000万円特別控除、分離課税の特例、住宅ローン控除 |
相続した空き家を売却する際の特例
相続または遺贈により取得した、被相続人の自宅またはその土地を平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡した場合は、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。(平成31年12月31日まで)
主に以下の適用要件があります。
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと
・譲渡時に家が一定の耐震基準を満たしている又は家を除去して土地のみを譲渡すること
・区分所有建物登記がされている建物(分譲マンションなど)ではないこと
・相続開始から3年目の年の12月31日までに譲渡を行うこと
・譲渡金額が1億円以下であること
3、譲渡損が出た場合の特例について
(1)居住用財産の買い換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
平成29年12年31日までにマイホームを売却して、新たにマイホームを購入した場合に、譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得などのほかの所得から控除(損益通算)することができます。損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損益は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰越控除することができます。以下の適用要件がありますので確認しておきましょう。
・居住期間には制限はありません
・前年、前々年にこちらの特例及び全ての特例の適用を受けていないこと
・買い換えるマイホームにも条件があります。詳細は国税庁公式HPも確認しましょう。
(2)特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
平成29年12月31日までの住宅ローンのあるマイホームを、住宅ローンの残高を下回る価格で売却して譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。この特例は、マイホームの買い換えをしない場合であっても適用することができます。
・適用要件は、上記の「居住用財産の買い換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」と同様です