不動産売却の基礎知識

売買契約の際に売主側が用意する必要書類とは?

売主・買主ともに条件の折り合いがついたところで、いよいよ契約です。売買契約の締結する際にはどのような書類を用意する必要があるのでしょうか。このページでは売買契約の際に売主側が用意しなければならない必要書類について解説していきます。

売買契約の前に行われる重要事項の説明

売買契約を締結する前に、買主側から「こんなはずではなかった」「こんなこと事前に聞いていない」などということにならないように、取引物件の詳細・取引条件等の重要事項のい説明が不動産会社より説明がされます。これは、宅地建物取引業法上、不動産会社の宅地建物取引士の資格を取得した者が物件や取引条件に関して一定の重要事項の説明をすることが義務付けられているからです。この重要事項の説明を受けて売買契約を締結することになります。

売買契約の際に用意する9項目

そしていよいよ売買契約を結びます。売買契約が成立すれば、売主側は物件の所有権移転や引渡しなどの業務が発生し、買主側には売買代金の支払い義務が発生します。この売買契約の際に売主側が用意するのもは以下の10個の項目です。

(1)登記済証または登記識別情報(買主に提示)
(2)実印
(3)印鑑証明書(3ヵ月以内のもの1通)
(4)管理規約等(マンションの売却の場合)
(5)建築確認通知書(検査済証)
(6)固定資産税納付書
(7)印紙代
(8)仲介手数料の半金
(9)本人確認書類

売買契約時には以上の10項目を用意する必要があります。順番に詳しく解説していきます。

(1)登記済証または登記識別情報

「登記済証」とはいわゆる不動産の権利証のことで、不動産登記を行った際に発行されているものです。しかし、平成16年に不動産登記法が改正され、権利証の発行は終了となりました。代わりに、12桁からなる登記識別情報が通知されることとなり、平成17年3月7日の以降の不動産登記に関しては権利証ではなく、登記識別情報を受け取ることになっています。この登記済証または登記識別情報は不動産の売買、贈与などによる所有権移転登記、あるいは抵当権設定登記、抵当権抹消登記などの登記を申請する場合に提出する必要があるものです。

登記済証や登記識別情報を紛失した場合はどうすればいい?

仮にも登記済証または登記識別情報を紛失しても再発行することはできません。紛失した場合は、代わりに以下の3つの方法にて所有権移転登記の申請を行います。

1、事前通知制度

事前通知制度とは、登記官が権利証等を紛失した方に事前通知という手続きにより本人確認を行うことで登記申請を行うことを言います。具体的には、登記申請後に登記所から個人の場合は本人限定郵便、法人の場合は書留にて書類が届きます。その書類に実印を捺印して、登記所に返送すると、登記所は本人確認が取れたと判断し登記の手続きを進めることができます。

2、司法書士が作成する本人確認情報

登記申請の代理人となる司法書士によって作成された本人確認情報を登記申請と同時に提供することによって、登記の手続きを完了させる方法です。司法書士が作成する本人確認情報は原則として事前に権利証等を紛失された本人と面談し、間違いなく本人であることの確認が取れた場合のみ登記申請に提供します。

3、公証人の認証による本人確認情報

権利証等を紛失した場合の本人確認情報は、司法書士のみではなく公証人も作成が可能です。司法書士が作成する本人確認情報と同様に、公証人が認証する本人確認情報を登記申請と一緒に提供することにより登記の手続きが完了します。

(2)実印

実印とは、住民登録をしている市区町村の役所や役場にてご自身の戸籍上の姓名を彫刻したハンコを登録し、受理された印鑑のことを言います。したがって、実印のような形態をしていても、登録済みでなければ実印とは言いません。実印は主に以下の用途に使用します。

・公正証書の作成、金銭その他貸借証書・契約書
・不動産取引
・遺産相続
・保険金や補償金の受領 等

まだ、「実印」がない場合は、実印を購入する必要があります。お近くのハンコ屋さんでもいいでし、最近ではインターネットでも手軽に注文ができるため利用する方も増えています。なお、三文判やシャチハタは実印として登録できませんので注意して下さい。

(3)印鑑証明書

印鑑証明書とは、家やマンションなどの売買の際や所有権を登記・移転する際に必要な書類になります。契約書類に押印された印鑑が、自治体で本人が登録済の「実印」であることを証明するのが「印鑑証明書」になります。つまり、自治体という第三者によって、その印鑑の正当性や信頼性を保証しますという証ですね。

印鑑証明書の発行・取得方法は?

今回はじめて印鑑証明書を取得される場合は、まず「印鑑登録」というものを行う必要があります。また、印鑑登録の際には先ほど説明した「実印」と「身分証明書」が必要になります。身分証明書は、写真付きの住民基本台帳カード、あるいは運転免許証などを準備して下さい。そして「実印」と「身分証明書」が揃ったら、お近くの区役所や市役所にて「印鑑登録」を行います。印鑑登録が完了すると、「印鑑登録カード」が発行されます。そしてこの「印鑑登録カード」をもってお近くの法務局にて「印鑑証明書」の交付申請を行います。印鑑証明書の発行申請は約5分程度の簡単なものですが、この際に証明書を発行する手数料が数百円かかりますので財布に少しお金を入れて法務局にいくようにしましょう。

(4)管理規約等(マンション住まいの場合)

マンションを売却する際には、マンションの管理規約やマンション使用に関する書類の提出が求められます。どのようにマンションが維持管理されているのか、ペットは飼ってもいいのか、などマンションの重要情報は買主側はとても気になりますよね。売買契約前に提出を求められることがありますので用意をしておくようにしましょう。万が一、マンション管理規約を紛失してしまった場合は、マンションの管理会社に連絡して取り寄せておきましょう。

(5)建築確認通知書

建築確認通知書は、特に中古の建物を売却する際に提示が求められることがあります。建築確認通知書は、売却する不動産が建築基準法に基づいて建築されていることを証明するための書類になります。この書類は不動産を購入した際にもらえるのですが、万が一、紛失してしまった場合は再発行することができません。その代わりとなる証明書を市役所にて数百円で発行してもらうことができます。

(6)固定資産税納付書

固定資産税納付書とは、毎年5月1日に納税義務者あてに送られている書類のことです。万が一、固定資産税納付書を紛失した場合は、再発行はできませんので、その代わりとなる固定資産税評価証明書を市区町村役場にて取得するようにしてください。

(7)印紙代

売買契約書は課税文書のため、印紙を張り付ける形で印紙税を納めなければなりません。その印紙代は一律ではなく、売買契約書の売買価格によって異なります。以下、印紙税の金額を表にまとめたものになります。

売買価格 印紙税
10万円以上~50万円以下 200円
50万円以上~100万円以下 500円
100万円以上~500万円以下 1000円
500万円以上~1000万円以下 5000円
1000万円以上~5000万円以下 10000円
5000万円以上~1億円以下 30000円
1億円以上~5億円以下 60000円
5億円以上~10億円以下 160000円
10億円以上~50億円以下 320000円
50億円以上 480000円

例えば、売買価格が3,000万円の場合、印紙税は1万円となりますよ。売買契約書は売主用と買主用の2通作成されますので、基本的には売主も買主も1万円ずつを支払う必要があります。それぞれに印紙を張り付けて消印する形で納税します。

(8)仲介手数料

法律上では、売買契約が成立した時点で不動産会社は仲介手数料を請求できる権利が発生します。しかし、実務上では売買契約の際に半金を支払い、残りは「決済」や「引渡し」の際に支払うことが多いです。しかし中には、売買契約の際に、全額の支払いを求める業者もあるようなのであらかじめ不動産会社には「仲介手数料はどのタイミングで支払うのか?を確認しておくとよいでしょう。

仲介手数料には上限がある

仲介手数料は、消費者が不当な不利益を受けないように法律で以下のように上限が定められています。面倒な計算などは不動産会社が行ってくれますが、不当な金額を請求されないためにも仲介手数料の計算方法を覚えておくとよいと思います。

売買代金 仲介手数料
200万円以下の場合 5.25%以内の額(=5%+消費税)
200万円以上400万円以下の場合 4.20%以内の額(=4%+消費税)
400万円以上の場合 3.15%%以内の額(=3%+消費税)

仲介手数料を算出する場合、上記のように売却価格を「200万円以下」「200万円以上400万円以下」「400万円以上」の3つ分割して計算する必要になります。例えば、1,000万円で売却できた場合、200万円分を5,25%、200万円~400万円となる200万円分を4.20%、残りの600万円分を3.15%で計算して合算します。それではもしも3,000万円で売却できた場合はどのような金額になるかみていきましょう。

3,000万円で売却できた場合の仲介手数料は?

200万円までの計算 200万円×5.25%=10.5万円
200万円~400万円の200万円分の計算 200万円×4.20%=8.4万円
残りの2,600万円分の計算 2,600万円×3.15%=81.9万円
合計 10.5%+8.4万円+81.9万円=100.8万円

仮にも3,000万円で不動産を売却できた場合、仲介手数料の上限額は100万8,000円になるということです。その内、半分を売買契約時に不動産会社へ支払う必要があるということです。

不動産会社によっては仲介手数料を値引きしてくれる

ここまで仲介手数料の上限や算出方法について解説してきましたが、これはあくまでも上限金額であるという事を覚えておいてください。要するに「不動産会社は、この上限額を超えて請求はできない」と言う意味であり、この上限額を超えない範囲内であれば、請求する仲介手数料は各不動産会社にて決めることができます。つまり、不動産会社によっては上限額いっぱいで請求する業者もあれば、仲介手数料を安くしてくれる不動産会社もあるということです。不動産の売却の中でも仲介手数料が支払う費用の中でも大きなウエイトを占めるため、少しでも仲介手数料が安いと嬉しいですよね。

(9)本人確認書類

そして最後に本人確認書類が必要になります。よく使われるのは運転免許証でパスポートや住基カードなど、顔写真付きで本人確認が行える書類を用意して下さい。不動産の売却では本人確認が必ず行われます。これは不正取引を防止する観点からも必ず必要な書類になります。

売買契約時に必要な書類は早めに用意を

ここまで売買契約時に必要な書類について解説してきました。はじめて聞くような書類やよくご存じで既に手元にある書類や証明書もあったと思います。こうした必要なとき、どんなものがいつのタイミングで必要になるかなど事前にある程度、把握し、準備できるものから準備しておくことで、スムーズに売買契約を締結することができます。売買契約直前になって「あれがない」「これがない」などと慌てていると買主に対しても不信感を抱かせていまう可能性もあるため、できるだけ早く準備しておくようにしておきましょう。

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